サイクリングエッセイ Hirobee's A day in the life

北摂里山のサイクリングとひろべぇの平凡な日々を綴ります。

羽束川で片足ペダルのサイクリストに出会う

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10月23日金曜日、骨折後1年目の検診日で朝一で川西市の協立病院へ。
レントゲンの結果はまたもや芳しくなく、鎖骨の骨折部の黒い影はいまだ映っていて、プレート除去手術はまたもや先送りになりました。

少しづつ良くはなっているものの、未だに左手に重い負荷をかけられない事や、日常の痛みや違和感から、この結果はある程度予測していたので、そう落胆することもありませんでした。
先生はまぁ気長に回復を待ちましょうという事で、3か月後に再診。

薬局で湿布剤をもらっていたらもう11時過ぎ、今日はこの後、北摂里山サイクリングをと自転車を積んできたので、道の駅猪名川に向かいます。
途中紫合堂田(ゆうだどうでん)のパン屋さんでコーヒー休憩をして昼食携帯食用にパンを調達。

道の駅猪名川で🚲を下ろし、服を着替えて、サドルに跨ったのは12時過ぎでした。

今日の予定は12号線を北上し、県境の峠を越え篠山に入り、紅葉の始まっているだろう、篭坊温泉から小柿渓谷を抜ける快適コース。羽束川沿いにr37号を下って木器(こうづき)から大坂峠を越え波豆川に出て、道の駅に戻るコース。
途中の後川(しっかわ)あたりで、うまくいけば黒枝豆も手に入るでしょう。

一路r12号を西峠に向かいます、杉生を越え、西峠へ道の傾斜が次第に増してくると、最近ほとんど走っていないので、身体とペダルが重くて全く自転車が進まない。
ついにフロントをインナーに落として、やっと奥猪名健康の郷に着く。
ここで最初の休憩。
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このままだらだらと西峠を越えて後川に出るのはつまらないし、篭坊温泉を走りたいのでここから右折して泉郷峠を越します。
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短いが急傾斜の泉郷峠をローギヤまで落してやっと越す。
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マイナーな小さな峠ですが、なかなか味わいのある峠です。

九十九折れを下りて小柿渓谷に出てr309を西へ、何時来ても人っ子一人居ないひっそりとした温泉街を抜ける。
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鉱泉跡。

薬師堂の大イチョウは黄色く色付いてはいるが、落葉が始まる見どころはもう少し先かな。
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渓谷沿いの大気は冷たく、峠越えで掻いた汗が冷えて寒いので、薬師堂の石段に座って、アームカバーとレッグカバーを付け、携帯食のパンを食べる。

ふと足元を見ると銀杏が落ちていた。
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石段を上がって薬師堂にお詣り、鎖骨の回復を祈る。
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イチョウの木の足元には一杯銀杏が落ちているので少し頂いて帰ることにした。
薬師堂の銀杏を食べたら薬効があるかもしれないしね?

流石に熟れた銀杏は匂うので、背中のポケットには入れられない。丁度パンの入っていたコンビニ袋があったので、それに入れて自転車の前にぶら下げた。
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此処からは風を受けパタパタと言う袋の音と、微かな銀杏の芳香を嗅ぎながらのサイクリングとなる。

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下篭坊のバス停で、次の停留所の名は湯舟。

フライフィッシング場を過ぎると空が開け、後川(しっかわ)の集落に出る。
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畑の土手には赤マンマ。
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西峠から篠山に抜けるr12号と交差する、後川の十字路のお店では、テントの下に黒枝豆が山積み。枝から外し袋詰めする作業を五,六人の人手をかけて忙しそうにやっていた。ここは路上販売はしておらず、ネット販売専門で小売りはしてくれない。
昨年の11月初め、退院後にドライブがてら黒枝豆を求めに来た際に、少し分けてと尋 ねたら、予約がいっぱいで小売りはしないと断られた。

十字路をさらに西へ、集落の道沿いには黒枝豆販売の幟があちこちに立っているが、今日は平日で何処も空のテーブルのみで人がいない。
一昨年購入した、後川小学校のすぐ向かいのガレージの臨時販売店が開いていたのでここで枝豆を購入。
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ここは親切にひと手間かけて、枝から外したマメを小袋に詰めて、サイクリスト用に背中のポケットに何とか入るちょうど良いサイズで売ってくれている。
一袋350円也。
おじいさんが茹でる前に鞘の両端をはさみで落とすと塩が良く浸みて美味しいよと教えてくれた。10月いっぱいは店をやっているから、また寄ってねと。

下り基調の心地よい小柿渓谷を抜けると道は南を向き、野外活動センターのキャンプ場に出る。
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此処からは温かい日を浴びて羽束川沿いの開けた田園地帯を南に走る。
緩やかな下り基調で快適に30kmオーバーで巡航。

ふとバックミラーを見ると一人のサイクリストが写り、ぐんぐん近づいてくる。
すぐ後ろまで来て、大きく映った姿は何と左足の片足ペダリング、右足は後ろへ下げてブラブラしている。ここらは某自転車店のレースチームがよくトレーニングしているので、さては片足ペダリングで追い抜いて、僕を驚かしてやろうとでも思っているんだろうと思っていたら、「後ろに着かして下さい」と声をかけられた。

片足ぺダリングで練習しているのに『後ろに着かして下さい』はおかしいな?
レーニング中ならどうぞ追い越して行ってちょうだいと返事したら、何かぼそぼそと言われたが良く聞こえなかった。ただずっと左足のみで、右足に替えないのが少しおかしいなと思った。

何時も休憩する大船山麓の八幡神社に来たので、「ここで休憩しますわ」と声をかけると、『それじゃ僕も』と言われてご一緒することに。

自転車を降りよく見ると、年齢は40過ぎ位だろうか、中年の痩身のスポーツマンぽい、なかなか格好の好い容姿の方で、オシャレなジャージを着ている。
左足はサイクリングシューズだが、右足は運動靴を履いていて、歩く姿も少し不自由な様子にちょっと驚いた。
自転車はミレニアムの頃のトレックの出始めのOCLVカーボンバイク、古いのによく手入れされていて、グリーンメタの塗装も輝きを失っていない状態で自転車好きなのがよく判る。

神社のすこし暑いくらいの陽だまりの石段に座ってお話をした。
何でも昔はMTBでレースをしていて表彰台にも上がったことも有るが、何年か前にオートバイで事故って右膝が曲がらなくなって、今は片足ペダルでロードバイクに乗っているんだと聞かされた。今は以前の仕事は引退され、亀岡のるり渓あたりに住まわれているとのこと。

ボクはただ驚くばかりで、何とも答えられなくて。『ボクも実は昨年鎖骨と肋骨をやってしまって今はリハビリ中なんです、今日は朝一で定期検診の後のサイクリングなんですが、歳のせいかなかなか良くならなくて・・・』と言ったら、なんとなくわだかまりが消えて、いろいろと自転車談義に花が咲いた。

木器から大坂峠を越えるところまでご一緒したが、平坦な道で、頑張って35km位で巡航して引いてみたが、遜色なく着いて来られた。流石に大坂峠の登りにかかると遅れて後ろから姿が見えなくなったが、やっと脚の調子の出てきた僕も、息切れ切れの峠越え。
今日も不気味なコンクリの塊にしか見えない峠の地蔵様の前で休憩しながら、しばらく彼を待っていたら、苦しそうに不自由な右足も使われて、器用なダンシングで登って来られたが、『待ってもらってスミマセン』と言いながら、峠で止まるのも惜しそうに、ボクの横を一気に下って行かれた。
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ボクは後を追って、ゆっくり波豆川集落に下っていくが、もう姿が見え無い。
『峠の下りで思いっきり飛ばすのが今は喜び』と言っていたが。そのままの勢いで、もう一つ緩い峠を越え、r12号まで一気に下って行ったんだろうな。
お名前も聞かなかったが、ちょっと素敵なサイクリストだった。
またいつかこの辺りでお会いすることもあるかもしれない。

後をすぐ追おうか少し迷ったのだが、波豆川の満開のコスモス畑が目に入って、何時も立ち寄ることにしている八坂神社で休憩することにした。
今年は三叉路付近の畑ではなく神社前が秋桜畑になっていた。
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秋晴れの波豆川集落。
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写真を撮り、いつものように神社に参拝して道の駅への帰路に就く。
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r12号まで下るが、ひょっとしたらどこかで待ってくれているかな?という微かな期待にも、もう何処にも彼の姿は無く、また会えたらいいなと思いながら、道の駅まで戻った。

今日のサイクリングの収穫は、薬師堂の銀杏と、後川の黒枝豆と。
ちょっと素敵なサイクリストとの出会いに、ボクも少し元気を頂きました。


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